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 「どーせ、ちぃくんのことでも考えてたでしょー?」  「ち、違うよっ」   「どーだか。せっかくの夏休み、だもんね?」  したり顔で覗き込むように見つめられると、真理亜の視線に耐えかねて隣の空席へと目線をずらした。真理亜の暗に指している内容が分かるだけに、恥ずかしさと寂しさが同時に沸き起こる。  ――夏休みだから、って関係あるかなぁ……  ちぃくんの『我慢』とやらは3月3日を過ぎ、ちぃくんが20歳になって。それでもまだ継続されている。  私だって、あんなふうに言われたから覚悟していた。誕生日が来たら……って。だけど、私もちぃくんも誕生日が終わったというのに、私たちの何かが進展する気配は微塵もない。  少しだけ。ほんの少し口づけが深くなったくらい。それもたまにのことだけど。  そんな私たちの関係が、夏休みというだけで変わるとは思えなかった。  分かってる、大事にしてくれてるんだってことは。でも真理亜の茶化す言葉が辛く感じるようになった程度には、私も手を出してくれない状況に不安を感じていた。  ――もしかして、私のこともう好きじゃなくなってきた?  苦い気持ちに蓋をして、真理亜に目を合わせられないまま、そうだねって呟くように返事をした。  でも、そんな私の態度を見逃す真理亜じゃない。  「コト……ちぃくんにも、考えがあるんだよきっと」  「……うん、分かってる」  「ホラ、そういうのだけが付き合ってるってことでもないし、さ?」  慰めようとしてくれる真理亜。その気持ちは嬉しいけど、ナーバスまっしぐらの私には、そんな慰め方は少し辛い。
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