本編

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 いつも誰かしらには言われてることがある。  『犬っぽい』。  犬と言えば……もふもふしていたり、やたら足が短い犬やら筋肉ムッキムキのガチムチわんちゃんまで色々種類があることをあたしは知っていたが。  その人達は犬の種類別の愛らしさを私に重ねて言ってるんじゃないと、『犬っぽい』と言われ始めたわりと当初から気づいていた。  ミもフタもなく言ってしまえば、『バカ』で『単細胞』っておっしゃってるんだなと。  んっふっふ、仕方ない。  月星 理沙乃(つきあかり・りさの)、16歳の高校生……  さすがに自分の性格は嫌でも理解している。  『バカ』で『単細胞』……そのものズバリだ。  記憶を蘇らせようと過去の記憶を掘り起こすと、身に覚えがありすぎるエピソードばっかりが頭にフラッシュバック。  相当にヤな思い出過ぎて、また記憶の隅に眠らせておく。  そうそう、『犬っぽい』と友達は笑いながらあたしに言うが……  あたしと今まで付き合った歴代彼氏たちは『犬っぽくて可愛い』と最初は愛でてくれるのだが、 別れ際には『お前犬みたいにバカで単細胞でうざったらしい。』と見事に切り捨てられる。  あたしの恋愛は基本犬の愛らしいところで始まり、犬のマイナスなところで終わってしまう。  あたしは正に『犬』なんだろうな…… 「んで今日呼び出した理由なんだけど」  ドーナツが異様に美味しくて有名なお店にあたしは居た。  正確に言うと、そこにはあたし以外にも1人の男性があたしの目の前の椅子に座っていた。  あたしの目の前に座る男性は美味しいドーナツを咀嚼しながらも、口を開いてあたしに声をかけた。  そしてあたしの前十数センチに小さく佇んでいるのは、どこにでもありそうな白い皿の上にに白いカップ。  その中にはミルクティーが満たされていた。  あたしは黙ってミルクティーで満たされたティーカップを持ち上げ啜る。  カップがとてつもなく軽い。  メラミン素材か……あたしは前のバイト先で知ったどうでもいい情報を蘇らせた。  軽くて落としても割れない素敵素材だが、熱すぎるものを入れると溶けてしまうあの素材。  あたしが妙な緊張感から現実逃避をしていると、目の前に座る男性が更に言葉を紡いだ。
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