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息が苦しくなって、咲良は布団の中から這い出た。
嫌だな。
今日は泣いてばっかりだ。
飲み込んだ涙が、苦い。
肌を刺す冷たい空気が、
なんだか切ない。
布団を抱き締めながら悶々としていると、コンコンと部屋のドアをノックする音が響いた。
孝次郎?な訳ないか、風呂に入ってるんだから。
誰だろう?
思いながらのろのろとベッドを降り、ノックが続くドアを開けた。
「遅い。三秒以内に飛んで来い」
「えっ、桃井先輩!?」
桃井はパーカーとスウェット姿で、青い袋を腕に抱えて立っていた。
咲良のパジャマと寝癖を見て、ふんと鼻を鳴らす。
「今は自習時間のはずだけど。もうおねんねするつもり?」
「え、あ、すみません......」
肩を狭めて謝ると、桃井はぷらぷらと手を振った。
「いや別に、うちの管轄外だから知ったこっちゃないけどさ」
「そうですか」
割といい加減な人らしい。
「おい、何か失礼なこと考えてない?」
「何でもない、です」
そんな咲良の思惑を察したのか、桃井は不機嫌そうに頬を膨らませる。
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