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「で、何で僕がわざわざ来てやったのか果たして分かるかな?咲良」
鼻先に指を突きつけられ、咲良は返答に困った。
桃井の表情からするに、怒っているのだろうか?
さっさと帰ってしまったからか?
文句を言いに......、来たとか。
それっぽいな。
いや、それしか思いつかない。
「うん、全然違うね」
「え」
咲良はたじろいだ。
読心術?もしくは超能力か?
桃井は呆れたように肩を竦める。
「いや、あんた考えてることが顔に出過ぎだから。よく言われない?」
「う......、言われます」
たしか孝次郎にも言われた。
しかし、ほぼ初対面の人間に指摘される程、恥ずかしいのはこの上ない。
咲良が真っ赤になっていると、桃井はぷっと吹き出して、抱えていた袋を咲良に押し付けた。
「あんたの制服。保健室に脱ぎっぱなしだったの、洗っておいたから」
少し咲良の顔から視線をずらし、髪の毛を掻き乱しながら早口に言う。
そういえば、保健室に置いてある予備の着替えを借りたんだった。
忘れて出て来たのを、桃井はわざわざ届けに来てくれたのだ。しかも、洗濯までして。
ちらちらと横目で様子を見てくる桃井に、思ったことを言ってみる。
「照れ隠しですか?」
「殺すよ」
すると一瞬のうちに胸元を突き上げられ、鬼の形相で睨まれた。
下からの威圧が、半端ない。
「ごごごごめんなさい!許して下さい!」
「ふん、ビビリのくせに。二度とふざけたこと言うんじゃないよ」
ぱっと手を離され、咲良は床に思いきり尻餅をついた。
じんじんと痛む尻を擦っていると、桃井は冷たく見下ろして言った。
「まあいいや。そんなことより......、聞きたいことがあるんだけど」
「な、なんですか......?」
桃井の顔色を窺いながら聞いてみる。
桃井は、顎に手を当ててしばらく考え込んだ後、少しためらいがちに言った。
「ちゃんと会長と仲直り出来たの」
「......え?」
息が、止まった。
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