3.㌣アンダーシティ・ボーイズ

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今昔、この学校において 心の弱味は命取り。 喰うか喰われるかの 弱肉強食 食物連鎖 とでも、言えるだろうか。 「は、何だって?」 崩壊寸前、なけなしのプライド。 聞き返しながらも、桃井は挑発的に赤い舌を出してみせる。 「ふん、咲良の次は僕か。 あんた、キス魔か何かなの?」 孝次郎は軽く頭を振った。 「違いますよ。そんな変態的な趣味はありません」 声まで甘やかだ。 蜜のようにとろりと耳の奥まで落ちてくる。 孝次郎は背を向けドアをくぐると、桃井に向かって手招きした。 花のソープが仄かに香る。 「入って下さい。風紀の巡回が来る頃なんで」 淡い月の灯りがともる薄暗い玄関。 部屋の中は真っ暗で、少しすすけた絨毯が闇に透けて見える。 妖しげな門番がいるせいか 漂ってくる異様な雰囲気。 桃井は内心、高まる好奇心を飲み下して見るも優美な悪魔に向き合った。 「......可笑しい。 何でそんな必要があるんだよ?」 「正直ムカつくから。」 孝次郎は自分の唇に、 人差し指をそっと当てた。 まるで見透かされているような動作。 ぎょっと目を見開く桃井に、孝次郎はきっぱり呟いた。 「......ヤラしい顔」 「は!?」 「教えてあげようと思っただけです」
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