3.㌣アンダーシティ・ボーイズ

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この学校には常に 欲望、願望、羨望が蔓延している。 そんな中、 支配者を支配者たらしめているものは、 何か。 扇情的。 小さく吐息を押し出しながら、孝次郎は自分の下唇をつうっと弄ぶ。 余裕ぶった捕食者の目。 「......天国に逝けるキスって、 どんなものか、知りたくない?」 ......バレてる。 「っく、僕を馬鹿にしてるのかっ」 屈辱に頬を燃え上がらせた桃井は、パーカーの袖を握り締めて叫んだ。 「まさか。」 孝次郎は肩をすくめて咲良を抱き上げると、部屋の奥へと消えていく。 「待て......っ!」 後を追う桃井の背後で、木製のドアがかちゃりと音をたてて閉まった。 月の光が完全に、遮断される。 仄かに香った花の香りが、 桃井の髪の毛に絡みついた。 「はあ、そういうところがムカつく」 孝次郎はベッドの上に咲良を下ろし、布団を掛けながら言った。 「馬鹿にはしてないけど、馬鹿だとは思ってるよ。咲良くらいにはね」 「うるさい、黙れ」 「加えてガキくさい。 安易に俺みたいな男の部屋にのこのこ入って来て、どうするつもりですか?」 「あっ」 気づけばもう、床に押し倒されていた。 腰が、ざらりとした絨毯に擦れる。 「襲ってくれと言わんばかりだ」 唇が触れ合うまで、紙一重。 先程咲良が見た景色が、目の前にある。 後、ほんの少し、近かったら。 あんな風に、 食べられてしまうのだろうか_____。 「だから、ヤラしいんだよ。可愛いな」 「や......ぁっ」 息が当たって敏感になった唇を、ざわりとした舌先が掠める。 「そんなお子様が、よくも俺の所有物を横取りしようとしたものだね」 震え出した桃井の瞳から、大粒の涙が目尻に流れていく。 ぴたりと隙間を埋めるように重なった唇を、桃井は夢中になって食んだ。 悔しいけど、拒めない。 "やめろ"って三文字が 喉の奥に貼り付いて どうしたって出て来ない。
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