3.㌣アンダーシティ・ボーイズ

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学校生活の水面下。 聖なるアンダーシティの 命がけのラブゲームにおいて 常に勝者であり続けること。 常に心奪う存在であり続けることこそが 支配者たる者の絶対的条件。 「いい鳴き声してるね、先輩」 「......う」 涙が溜まる目尻を舐められながら、桃井は呻き声を漏らした。 指先と唇の熱は瞬く間に全身に広がり ちりちりとした火花が身体中を飛び交う。 キスだけで、こんな。 体の内側と外側の温度差で、 今にも引き裂かれてしまいそうだ。 「あんた、許さないから」 ゆらりと離れていく孝次郎に、桃井は震える声で言った。 孝次郎は身を屈めて桃井の頬を撫でると、まるで何事も無かったかのように、手を差し伸べた。 「立てますか?」 「っ、いらない」 桃井は乱暴にその手を払うと、冷たい床に手をついた。 孝次郎は宙に浮かんだ手を引き寄せながら、呆れたようにため息を吐く。 「ねえ、本当に大丈夫?」 「う、うるさいな......っ」 桃井は涙混じりに呟いた。 何で言うこときかないの、この体。 そのくせして、 何で媚びてるみたいにあいつのこと、 見上げてんの_____? 「それにしても、難儀な話だね」 孝次郎は咲良が寝ているベッドの隅に腰を下ろし、膝の上に頬杖をついた。 「伊織が相手じゃ、 伝わるものも伝わらないでしょう?」 心なしか愛おしげに 焦れったそうな苦笑を投げ掛けて。
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