3.㌣アンダーシティ・ボーイズ

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つい見惚れる。 その顔に浮かんだ、篠田の面影。 見ていると 胸が 心が 酸っぱくなる そんな 笑み。 酸っぱくなるから 僕は泣きたくて 泣けなくて たまらなくなる。 「盗み聞きしてた。すみません」 「......あんた、委員長の何なんだ」 僕の声は震えていた。 既に疑似恋愛のようなものが 僕の中で始まってしまって いたのかもしれない。 変に渇望した僕の恋は 口づけとは遠い 遠いところに 抱き締めただけの秘めた想い ただ......、それだけのことだったから。 しかし。 「従兄弟の雨宮です。初めまして」 「はあ、従兄弟?」 僕の深淵を探りあてた当の本人の そんな馬鹿げた告白を聞いた時、 僕はぽかんと口を開けてしまった。 「顔は似てないけど、雰囲気が似てるってよく言われるよ」 ......似てるかって? うん、そうだね。僕も思ったけど。 ふてぶてしい態度とか 似非紳士くさい不埒な佇まいとか 人を手玉に取る才能とか 確かに、よく似てるかもしれないね。 ......嫌なとこばかり、 すごくよく似てるかもしれないね。 「最悪!!」 「わっ、怒った。」 悔しくて涙が出た。 この時ばかりは、止められなかった。 何で僕 こんな嫌な奴らにばっかり 惹かれてしまうんだろう。 精神的サディストばっかり。 片や無自覚。片や性欲旺盛な悪魔。 ......どっちも、屑野郎じゃねえか。
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