1.学生生活において、スイカは天敵です

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「橘咲良」 ムダに広い敷地内の中でも、人目につかない校舎裏。 青々と茂った木の陰、震える少年を、六つの人影が囲うように立っていた。 「お前さあ、黒瀬様に何てことしてくれたと思ってんの」 その中の一人に肩を押されて、咲良はその場にかくりと崩れ落ちた。 他の男子生徒が、持っていたバケツの中身を咲良の頭に容赦なくぶちまける。 制服のシャツが灰色に染まり、髪の先から滴る水が虚しく地面に溶けた。 「コップごと水ぶっかけるとか、ほんとあり得ないから。どんな神経してんの」 「ちょっと可愛いからって、調子乗り過ぎなんだよ」 髪を引っ張られ、蹴られても、咲良は自分の肩を抱くことしか出来なかった。 声にならない悲鳴を、 泣き出しそうな空にあげていた。 痛いよ。怖い。 誰か、助けて______。 「委員長、そっちは中庭ですっ」 「は?」 そんな時、 不意に聞こえてきた誰かの声。 お世辞にも正義のヒーローには 到底思えなかった。
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