4.僕と 貴方と 宇宙旅行

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嵐のような英語漬けの後。 「ウォークマン没収された......」 早弁を始めた咲良の横で、飛鳥は机に頬をつけてむっつりとぼやいた。 音楽中毒の飛鳥のこと。 さぞ辛いことだろう。 「いーよなあ、咲良は何か食ってるだけで生きていけるんだもん」 「む。食いしん坊で悪かったな」 咲良は孝次郎お手製のサンドイッチを 頬張りながら言った。 ちなみに今日の具はコロッケ。 冷めていてもさくさくな食感が堪らない。 あいつ、こういうところが、ずるい。 胃袋を掴まれるってつまり、こういうことだろう。 「今日の夕飯何かなあ......」 「気、早くない?」 「うっさいな」 くく、っと喉を鳴らして笑う飛鳥を、サンドイッチ越しに睨み付けてやる。 飛鳥は見た目怖そうなのに、 案外人懐こい。 それに気付いたのもつい最近だ。 数日前、親衛隊に襲われたところを飛鳥は篠田と桃井と一緒に助けに来てくれた。 怪我も酷くはなかったし、他に悩むことがあったせいか大してショックは受けなかったが 翌日、心配した飛鳥が声を掛けてくれたのは、 素直に嬉しかった。 「ふーん、俺もご馳走して貰おうかなあ」 「だめだ。僕が食べる量が減る」 「ケチ」 飛鳥は不満そうにぷうっと頬を膨らませた。 咲良はそれを見て、思わず吹き出した。 「あ、何笑ってんだよ」 「だって、飛鳥、顔、やばい」 口には出さないけれど、 正直、和む。
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