4.僕と 貴方と 宇宙旅行

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そうして和んだのも束の間。 こういう時に決まって邪魔に入るのは 油断ならない、あの男。 「ふうん、楽しそうだね」 「ひぁっ!」 無防備な咲良のうなじを 冷たい吐息がふわりと撫で付ける。 「くすぐったいだろ、孝次郎......!」 「まあ、なんて間抜けな驚き方」 孝次郎はくすくすと笑いながら 真っ赤な顔でのけ反る 咲良の腕を素早く捕らえ 「ぼうっとしてると、 ............ 食べられちゃうよ?」 最後に残ったサンドイッチの一欠片を 咲良の指ごと、口に含んだ。 ぴきっ、と固まる咲良。 「んっ......。」 そんなこと お構い無しの孝次郎といえば 鼻に抜ける甘ったるいため息を漏らし 咲良の肩に顎を乗せてもたれ掛かった。 うっとりと目を閉じ 頬を染め 柔らかい果実を咀嚼するように ゆっくりと甘噛みを繰り返す。 ......まるで、夢見心地。 咲良は桃色の唇に挟まれ ざらついた舌に転がされる 自分の指を、呆然と見つめた。 教室の隅から廊下から、きゃああ、っと甲高い悲鳴が耳に入って、瞬間、はっと我にかえる。 「ちょちょちょっ、何してんのっ!」 慌てて指を抜き取ると。 ふと開いたその間に ねとりとした透明な液が糸を引いた。 孝次郎は噛み砕いたサンドイッチを飲み下すと、けろりと言った。 「やっぱ美味しい。俺って天才かも」 「そんな訳あるか!死ね!」 咲良が放った蹴りをひらりとかわし、孝次郎は咲良の机にオレンジジュースを置いて、行ってしまった。 ......買って来てくれたんなら、もっと普通に渡せ。 しかめ面で指を拭う咲良に、 一部始終をすぐ傍で見ていた飛鳥は、気持ち悪い笑みを浮かべて言った。 「お前らってさ、付き合ってんの?」 「ないない!絶対に、ない!!」 「えー、でもぉー、て痛っ、ちょ、蹴らないでっ」 あんなセクハラ野郎、 冗談でも願い下げだ。
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