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今まで知らなかった、恋の裏表。
『好き』って言われて
困ってしまう自分がいる。
でも
痺れるような体の熱さに
戸惑ってしまう自分もいる。
......だから、どうしていいのか分からない。
僕には、
ずっと好きだった人がいるのに___。
「......それで?」
「へ?」
「咲良、本当にあいつと、付き合うの?」
突然、頭の上から降ってきた冷淡な声に
咲良はぱっと顔を上げた。
すると。
「ちょっ、ま、待って飛鳥。
その............、近くない?」
ジト目をした飛鳥の顔が、至近距離に迫っていた。
不意に唇がその鼻先に触れてしまい、咲良は慌てて身を引いた。
「近い?」
飛鳥は再び距離を詰めると、こつん、と額を合わせて囁いた。
「じゃあ、咲良が答えるまで離れてやらない。」
「......は?」
急に何だ、こいつは。
音楽の聴きすぎで頭がおかしくなったのか?
仕方なく後頭部を掴んで引き剥がすと、飛鳥は大真面目な顔をして言った。
「言っとくけど俺、浮気は許さない主義だから」
「......待て。やっぱり頭、大丈夫か?」
「咲良、お前にはもう、会長様という立派な想い人がいるじゃないか!」
「そうだけど......って、何で知ってんだよ!」
「イイ男に目移りするのは分かるけど、俺は伊織さんの味方だもん。お前を正しい方向へ導く義務がある」
「そんなことどうでもいいんだよ!何でお前が僕の、すっ、好きな人を知ってんだ」
「それはほら、この俺様の素晴らしい超能力で......。って、痛い痛い、目は!目はやめて!」
「吐かないと、次は左目をヤるぞ」
「あっはははは、ごめん、............モロバレ。」
. . . . . . . . . . . . 。
「死ね」
「あははは、やべえ笑い止まらねえ.....って、」
ぶす。
「モロバレとか、嘘だろ............。」
茫然とした咲良の呟きと授業開始のチャイムは、自称超能力者の悲鳴ですっかり掻き消されてしまった。
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