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どこかで、確かに、見たことがある。
それも、昔の話じゃなくって。
昨日も今日も、一昨日も会った人。
「また難しい顔してる」
篠田は咲良の眉間に出来た皺を伸ばすように、ぐりぐりと人指し指を押し付けた。
ふわりと口元を綻ばせる。
「あ。黒瀬くんのこと、考えてたんでしょ?」
「へっ、そんなこと......!」
「図星だ」
本当に違うのに......!
咲良は口も聞けないまま黙るしかなかった。
「そっか......。」
篠田はベンチに座り直して右足を抱えると
膝に乗せた花束に口元を埋めた。
「似てる___。」
「......え?」
宇宙をさ迷うような無重力の呟き。
誰に?
思わず聞き返そうと口を開きかけると
長い指が咲良の言葉を押し止めた。
「君、黒瀬くんに、そっくり」
寂しげに微笑む美しい先輩に
咲良の喉が、こくりと鳴った。
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