1.学生生活において、スイカは天敵です

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「え。いやちょっとね、向いただけだもん。気になって」 「嘘つけ。いい加減、校内の地図くらい覚えて下さいよ、このポンコツ!」 「うるさいな、そんなんとっくに覚えてるに決まってんじゃん。ほら、裏庭はこっちでしょ」 「そっちは食堂ですって!」 「..................はあ?」 束の間の沈黙。 「何ぼけっとしてるの。早く連れて行ってよ、全くもう、使えないなあ」 「委員長が意地張るせいですよっ!」 すぐそこから聞こえてくる怒濤の応酬。 六人は勿論、咲良までもが、声のする方向を放心しながら見つめていた。 校舎の角を曲がってきた、声の主らしい黒髪の少年と、目が合う。 「あ。」 その少年は間抜けな声を出すと、姿勢を正してこほん、と咳払いをした。 「あーーー、お取り込み中失礼。悪いけどそこのびしょ濡れの男の子、こっちに引き渡してもらおうか、スイカ共」 「なっ、だ、誰だよお前っ」 数秒間を空けて、我先にと正気を取り戻した男子生徒が、うろたえた様子で叫ぶ。 「俺?」 少年は艶やかな黒髪を掻き上げて、 冷たい瞳で男子生徒を見据えた。 「保健委員会、委員長。篠田伊織。 もう一度言うよ。その子を渡せ」 有無を言わせぬ鋭い眼光。 どことなく気の抜けた感じが否めない。
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