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「黒瀬くんもよく見てた。夕暮れの空を、ここで」
咲良は自然と、篠田の視線の先を辿っていた。
何千と咲き誇り、風に揺れる極彩色の花々。
甘い香りで風を染めては
自らも寄り添って旅立っていく。
あの、宇宙銀河に身を踊らせて。
「きっと黒瀬くんは
君の為に生徒会長になったんだね。」
スペースナビゲーターは語る。
咲良の知らない
もう一つの星の旅路を___。
「黒瀬くんは、君を待ってたんだ」
咲良は、篠田の横顔に視線を戻した。
口元は、やはり花束に隠れて見えない。
それでも、空を向いた睫毛が微かに震えるのを、過ぎていく夜風のせいだとは思えなかった。
「先輩、もしかして___。」
気付いてしまった。
甘い花の香りを嗅ぎながら
その視線の先に映っているのは___。
「祐のこと、好き?」
「......うん」
動揺の波が、咲良の全身を飲み込んだ。
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