互いの決意

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龍馬は体を慎太郎のほうにやると、 「わしはもうこの国に戦争を引き起こしたくないがじゃ、そのためには、幕府を追い詰めてはいかんとおもっちょる」 と先ほどの雰囲気とかけ離れた様子で真摯に言った。 「・・」 「そこで徳川に恩を売るがじゃ。名目だけでもいい、幕府と幕臣が納得するような・・」 (やはりそうか) 慎太郎は自分が失望しているのを感じた。 それは龍馬が語るたびに、大きくなる。 「もういい」 慎太郎は強く言うと手で制した。 「もう、いいがじゃ・・」 と今度は事切れるような声で言うとうなだれた。 苦しかった。自分が予想した通りの展開に、全く当てはまっていることに。 だが、まだ希望は捨てなかった。 「じゃが、おまえのいうことは全く、理想論にしか過ぎんのじゃ。徳川はあと一押しで崩れる。その一手をためらっては、仇敵に立ちなおらせる機会を与えてしまうがじゃ」 「それこそが理想じゃ。そうしてこそ、権力が均衡して平和が保たれるがじゃ」 「そんなことで今まで幕府に殺された同士を持つ者たちが、納得するわけがないがじゃ!志半ばで俺たちの仲間が何人死んでいったか、そいつらの仇を討とうっちゅう気は起こらんのか!」 「それではいかんがじゃ!それではこの国はのうなってしまう。これ以上戦争しちゃあ、また人が死に、恨みは募るばかりじゃ。 ほいじゃき、わしも死んでいった者らのことを忘れたことはない。じゃから、あの世から見せてやりたいのじゃ、あいつらの志が平和な国をつくったという事実を」
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