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○○○自ラ盟主ト為り
この一節を見た慎太郎は大きくため息をついた。
それは龍馬が書いた『新政府綱領八策』であり、以前彼にもらいずっと懐に入れてあるものだ。
慎太郎は気分転換と本来の目的のためにとそれを黙読したのだった。
何回読んでも、彼の視線はその印象的な一節でとまってしまう。
それは奇妙さに惹かれるだけでなく、何より『○○○』という空欄が、彼を思考の渦で苦しめるのだ。
八つの綱領が書かれたその後に、これらをふまえ新政府を統括する者の名が入る位置にその一節があった。
この『○○○』に入る人物が、中心となって日本の国を動かすことになるのは疑いがない。
選択肢は三択であった。
元将軍徳川慶喜か、または、倒幕を推し進めた薩長の有力者、それとも天皇か、である。
様々の偉業を為した龍馬は国事に大きな発言権を持っていたため、政権が朝廷に返上するか徳川に帰すか薩長に渡すかは彼の一言によって大きく左右されるだろう。
慎太郎には分かっていた。
『○○○』に当てはまる言葉、すなわち、龍馬が新政府の舵取りを任せたいと思う人物が。
それは何世代にも渡って、長く世を治めた実績のある人物だ。
だが、これらの自分の推測が当たることを慎太郎は恐れたのだ。
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