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向かい合い角を突き合わせていた二人が、申し合わせたようにツクモの側を見る。
なぜか、気まずい沈黙が三者を包んだ。その空気を払うように言葉を切り出したのは渚だ。
「あぁ、そうだった。すっかりキミを忘れていたよ……」
空いた左手でポリポリと頭を掻いて渚が言葉を続ける。
「んー、緊張感もなくなっちゃったし、やりにくい仕事でもある。今日はここまでにしよう」
「あ……う……」
腰でも抜かしたのかまともな返答が出来ないツクモを相手に渚が真剣な表情を作る。
「宿主くんには告げておくよ。正邪についてはともかく、身に余る力はろくな事にならないというのが昔からの相場だ」
その顔を崩さぬまま僅かに間を空けて渚が更に言った。
「……もし、祓うだとか、そうでなくても相談があるならここに来たまえ」
そう言って懐に手を伸ばすと、一枚の名刺をツクモの方に投げ捨てた。
「本音を言えばせっかくの獲物を前に残念なんだ。けど、実はそろそろ縛式がもたなくてね……」
「…………」
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