1.始まり

11/17
前へ
/26ページ
次へ
「ねぇ、やっぱり何かあったでしょ?!疲れてるって感じじゃないよ。 まぁ、話したくなかったらいいけど、いつでも聞くからね!」 香織は心配そうに、私の顔を覗き込んで言った。 「うん、ありがと」 たいしたことじゃないのに、なんだかやっぱり、昨日のことはうまく話せない。 もう会うこともない人だし…。 それより、あの傘手放したのは痛かったかなぁ(笑) 「あ、そうだ!きのうの飲み会でね、営業部の後輩にライブのチケットもらったの! 今週の土曜なんだけど、ミユ、一緒に行かない?」 香織は、ロッカーのドアを勢いよく閉めながら、思い出したように言った。 「ごめん、ライブとかあんま興味ないし、私はパス。後輩の子たちと行ってきたら?」 「だよねぇ、ミユは絶対行かないだろうなって思ったんだけど‥ それが、後輩が行けなくなったからチケットもらったの。 だから、ねっ♪付き合いだと思ってさ、お願い! 一緒に行って!」 二重瞼をパチパチさせながら、子犬のような顔で頼み込む香織。 「え~困ったなぁ。 私ライブとかほんと行ったことないし、歌もよく知らないし。 で、ちなみに、そのチケットって誰のライブなの?」 「まぁ、ミユは間違いなく知らないだろうけど(笑) 《Another Sky》っていう韓国の5人組グループなの! でね、うち1人だけ日本人が混ざっててさ‥ それが、私の幼なじみで。 中学まで一緒だった白石健二(シロイシ ケンジ)って奴なんだ! だから、私的には一度、ライブ見てみたいなぁって思っててさ」
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加