1.始まり

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少し蒸し暑さを感じる梅雨入り間近の6月。 夕方から突然降り出した霧のような細かい雨が、窓を濡らしている。 残業を終えた私は、家から持ってきた刺繍入りの黒い傘を差して、いつもより遅い時間に会社を出た。 オフィスが立ち並ぶビル街を抜けて少し行くと、そこには小さな公園があった。 夕暮れ時は、いつもそこで小学生が遊ぶ賑やかな公園。 けれど、今日は雨のせいか、辺りも一層暗く人影も全くない。 (もうこんな時間だし、さすがに誰もいないよね) 寂しげな細長い路地を、私は急ぎ足で通り過ぎようとした。 その時だった。
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