意地

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「おはよう」 そんな柔らかい声がして、 あれ、なんか寝る前にコイツ不機嫌じゃなかったっけ?ってちょっと考えてみる 「ん、あさ」 そう呟くように言うと 「明るくなってますからね」 笑った声が、する 「んー」 ぼんやりした頭で、ほぼ勢いだけで美紗緒を抱き寄せて胸の中に押し込む 「もうちょい」 このまんま押し潰してーな、って気持ちだけにしといて、これでもか、ってさわさわとさする 「まだ寝るの?」 「美紗緒」 ――あ。 今なら、言えるかも 「はあい?」 お気楽な、美紗緒の声。 「あー」 「……」 え、と。 なんて言えばいーんだ、っけ。 そう、戸惑ってたら。 「イチさん」 「――ん……」 ちゅ、と。 美紗緒の柔らかい唇が、首筋に触れた そんでもって、抱きついてきた ああ、あれだ 今、言えばいいんだ そう、もう 口にするチャンス 何回逃したら、気がすむんだ、俺は。
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