第1話

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忘れられない記憶や大切な人 私は何度この季節を この風景を見たのだろうか きらびやかに飾られた街は恋人同士が目立つ あんなもののどこが良いのかなんて、人でない私が知るはずがない、知っても得はしないだろう 寒い季節にしか自由気ままに動けぬ私達、暑い季節は死ぬ者が多いからか なくすことには慣れてしまった あぁ今日も誰かが別れた 「そろそろ吹雪でもやってやりたいねぇ…キラキラしすぎて嫌になる」 姉様達が街を見ながら企む、そういえば明日は街に行っていい日だ 昔食べた『けーき』という甘味を買いに行こうか 「初姉様、明日お金をくださいませんか?」 幼子の時から良くしてくれた初姉様に聞いてみたら、形の良い唇で笑みを作った いいということらしい 初姉様は声が出せぬ代わりに表情が豊かだ 声が出せなくなったのは人に声帯を取られてしまったから この地域の長である和津音様が過保護になるのもわかる 初姉様は筆と紙を手にとるとさらさらと文字を書いた
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