きみはひとりじゃないよ

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「……天使で変な妄想するのはやめてくれる?」  ジトっとリエルがにらむ。やっぱりそうだ。僕の心は見透かされていたのだ。 「ひどいじゃないか」 「はいこれ。覗いてごらん」  僕の訴えは華麗にスルーされた。  リエルが出してきたのは、一本の筒。これは望遠鏡? 僕は受けとり、目に押し当ててみた。すると、望遠鏡がひとりでに向きを変え、下を向いた。  アスファルトの道路が見えた。だれかいる。  彼女だ。花束を抱えている。さっきどうして大人びた雰囲気を感じたのかわかった。礼服を着ているせいだ。  彼女はひざを折り、花束をガードレールのそばに置く。そこは、僕が死んでから囚われていた場所だった。 「なんで彼女が」 「あなたのことを大切に思っているからでしょ」  リエルのあきれたような声が聞こえた。 「それに、今日は記念日。あなたが死んだ日だからよ」  ああ、そっか。すっかり忘れてた。僕の命日だ。でも記念日という表現はいかがなものだろう。別にかまわないけど。
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