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「きみはひとりじゃないよ」
孤独の中にいると、こんなセリフとともにあいつはやってきた。
どこからともなく現れては、うしろから思いっきり抱きついてくる。やわらかい感触が背中を伝わって全身に広がってゆく。優しい温もりに包まれて、体がぽかぽかしてきた。意識が曖昧になる。このままあの世へ行ってもいい気分。
これが自称天使の狙いだとしても、いいんじゃないかと思ってしまう。が、すんでのところで思いとどまる。
さっさと話題を変えてしまおう。
「……当たってる」
僕は恥ずかしさと照れからすぼむ声で言った。演技ではない。そこまでの役者力は僕にない。
「ワザとよ。うれしいでしょ?」
はしゃいだようすで、リエルが僕の顔を覗きこんでくる。こいつのコミュニケーションはだいたいこんな感じだ。無邪気な瞳が心をくすぐった。瑞々しい唇を結び、微笑を浮かべている。
ずっと顔をあわせていると、どうかなってしまいそうだった。
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