きみはひとりじゃないよ

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 細い眉をハの字にして、リエルは不思議そうな顔をした。 「……見守っていたい、大事な人がいるんだ」 「もしかして、前に話していた彼女のこと?」  僕は首を縦に動かした。  僕には彼女がいた。この姿になる三ヶ月前からつきあいはじめた彼女。好きだ、と告白してくれ、僕を理解してくれた。僕には彼女と話したいことがまだいっぱいあった。  そんな思いがねじれ曲がった結果、僕は地縛霊になってしまったのだ。たぶん。けれど、こうなったのは要するに、僕に未練があるということなのだろう。事実、僕には彼女を見守っていたいという気持ちがある。  僕は、リエルの瞳を真剣に見つめた。今度はそらすわけにはいかない。息を深く吸い、口を開く。 「たとえ悪霊になっても僕はここにいる。彼女を見守るために。僕がここから動けない存在だろうと」  リエルは溜息をついた。聞きわけの悪い子にうんざりしたようすだった。無言で僕の手をとり、そっと握った。僕の決意表明を理解してくれたのだろうか。いや違う。リエルは僕の体をさっきの犬の飼い主と同じように引っ張っている。とうとう業を煮やし、強硬手段に出たのだと思った。僕は力を入れ、必死に抵抗する。
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