きみはひとりじゃないよ

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「さあ、きみがとどまる理由はなくなったけど、どうする?」 「わかったよ。行けばいいんだろ。どこへでも連れてけよ」  自暴自棄になり、僕はぶっきらぼうに答える。この気持ちは、失恋とはまた違ったような気がした。裏切りにあった感じに近い。  このときばかりは死んでいてよかったかもしれない。もし生きていれば、僕は彼女を揺さぶって理由を問いただしていただろう。そんな情けない姿をさらさないだけマシじゃないか。そうやって自分を無理やり納得させた。 「じゃあ、行きましょうか」  リエルは天使らしく微笑み、僕の髪をそっとなでてくれた。そして僕の頬を伝う涙を人さし指で拭った。  僕は自ら手を差しだした。その手をリエルが両手で包みこむ。  そして空へ。リエルは背中の白き翼を羽ばたかせ、僕をあの世へと導く。こいつは本当に天使なんだ。今さらながら思った。 「一ついいかな?」  遠ざかるこの世を名残惜しみながら顧みていると、突然リエルが切りだした。ゆっくりと速度を落とし、やがてとまった。手は握ったままだ。今ここで手を放せば、地縛霊の僕は再びあの場所へ引き戻されてしまう。
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