誕生日の贈り物

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 もうずっとこうしている。  目が覚めたら、私は独りぼっちになっていた。  昨日まで、私を含む八人の家族で賑わっていた家は、しんと静まり返っている。  さっき見たばかりの掛け時計に、イライラと視線を投げる。もう昼の三時だ。  私が起きたのは朝の七時。そして、それより前に、私の家族は消えてしまった。 「何処に行ったの……」  本日数十回目の独り言。返事はなく、帰って来る気配もない。  ぐぅっと、お腹が鳴る。そのせいで私は、一層惨めな気分になる。  ──どうなってるの?  不意に涙が滲む。  ……泣くのは嫌いだ。  泣いたって、頭が痛くなって、吐き気がするだけだ。誰も、私の苦しみには気付かない。  どんなに泣き叫んでも、私の声は、誰の耳にも届かない。  泣くだけ無駄だと気付いたのは、十歳になったある日。他人に期待するだけ無駄だと知ったのは、十二歳の時。 生きることに絶望するのには、十五年もあれば充分だった。  そんなはず無いと判っていても、やっぱり、この年でこんな事で苦しんでいるのは、自分だけなんじゃないかと思ってしまう。  だって、周りの人は皆、あんまり幸せそうに笑うから、死を望んだ事なんて無い様に見えるよ……。  まるで、何処かの映画みたい。 “一家の面汚し”、“邪魔者”、“必要無い存在”が、ある日「家族皆消えちゃえ」と望み、次の日本当に消えちゃう話し。  ただ違っているのは、うちの家族は旅行に行っているのでも、学校に行っているのでもなく、本当に居なくなっちゃった事。  それと、残念ながら、私のIQは彼みたいに高くない事。  あと、うちの家族は、そんなに露骨に私を貶さなかったこと。  最後に、彼と違って、十二歳の時からずっと、本気で家族に消えて欲しいと願っていたこと、だ。  でも、本当に消えられると、それはそれで怖い。  勿論、怖いのは孤独ではない。周りの目だ。  私は、人一倍一目を気にする。ダサいと思われるなんて有り得ないし、バカに見られるなんて冗談じゃない。  ましてや、“家族に捨てられた可哀想な子”なんての、許すと思う? 答えは、否。そんなの、論外。  イライラと立ち上がる。  もう何度もしたことだけど、何も入っていない冷蔵庫を開ける。  ちくしょう。ちくしょうっ。ちくしょう!  何で私がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。  私が何をしたって言うんだ!!
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