悪魔の贈り物

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 いつも自信満々で、僕の生活に入りこみ、僕のスペースはいつの間にか、二人のスペースになっていて、僕は自分自身について考えることが少なくなり、僕らについて考えることが多くなった。  これらはごく自然に切り替わっていったのだ。  そして、結婚。  信じられないような、幸せだった日々。それはいくぶん、心の中で美化されてしまっていたかもしれないけど、紛れもない事実。  今の僕にとっては紛れもない事実だ。  そして唐突な終焉……。  彼女が事故で死んで、そこからの日々はよく覚えていない。  その時の心情を語れ……だって?  死んでも嫌だね。  僕の中にはぽっかりと穴があいている。そこには何もない。何もないことを、語ることも出来やしない。
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