写真の少女

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写真の少女

義母の容態は毎月の定期検査で大きな変化がないまま数ヶ月が経ち、いつしか義母の病気のことは日常に埋もれていった。 そうして、正月も過ぎた頃だった。 旅行の話が出る数日前、周子の心に引っかかる出来事があった。 義母は身辺を整理し始めたのだ。片づけがひと段落してからは、押入れの奥から古い手紙の束だの、アルバムだのを引っ張り出し、開いてはじっと眺めてため息をつく日が多くなっていた。 「おばあちゃん、何してるの?」  六歳になる娘の美雪(みゆき)が幼稚園から帰るなり、コートを放り出して、義母の部屋に入っていった。 義母は子供が苦手なようで、美雪が生まれてからは穏やかな笑顔を見せることは少なくなっていた。 美雪が部屋に来ることを嫌がり、行けばお菓子を与えて、いつも、さっさと部屋から追い出してしまうのだ。 皮肉なことに、それを目当てに美雪は必ず義母の部屋へ駆け込むようになってしまった。 「美雪、入るときはノックをするの」 美雪に続いて周子が義母の部屋へ顔を出し、いつもすいません。と、頭を下げた。 「いいのよ」  義母は笑顔でそう応えたのだが、声は硬く、美雪が部屋を訪ねることを迷惑に思っているのが周子にはあからさまにわかった。 そんなことにはお構いなしに、人懐っこい美雪は、義母の肩越しにアルバムを覗き込んでいた。 「髪が伸びてきたね。ばさばさしてうっとうしいから切ったほうがいいわね」  義母の肩に美雪の髪がかかり、義母は顔をしかめて周子にこれ見よがしに言った。 「美雪ね、一年生になるから髪伸ばすの」 「自分で手入れができないうちは伸ばしてはだめね」 「できるもん!」 義母は美雪が髪を伸ばすのを嫌がる。髪が肩につくようになってくると、あれこれと理由を言っては切らせようとした。周子としては髪を伸ばして可愛いリボンの一つもつけてみたいと思うのだが、あまりにもしつこく義母が言うので、波風立てたくない周子はつい言いなりになってしまうのだった。 「ねえそれ、昔の写真?」 「見ても面白くないわよ」  義母が閉じようとしたアルバムを美雪が引っ張った。 「見たい。美雪に見せて。おばあちゃんはママだったの?」 「そう。子供のときもあったのよ」 「へえー」
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