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手品なんかで使われる白いハトは銀鳩といい、ハトの中でも体の小さい種類らしい。だから帽子の底や服の袖なんかに隠す事が出来るのだ。
先輩はまたクルリと1回転。
「やってみたいよねー。バサーって、バサー」
まぁ銀鳩がいれば出来るという話でもなく、やっぱりある程度の調教は必要なのだが。
「種も仕掛けもございません……バサーっ!」
多分この人はそこまで考えてない。
と、先輩はガックリと肩を落とす。
「でも後輩くんが世話しないんじゃハトは飼えないか……」
「自分が世話するという発想は無いんですね。さすがです」
「まぁね」
どうしてそこで「まぁね」なのか。
諦めたのか、先輩はふぅとため息を吐いて椅子に座った。
「でもさー、バサーっじゃなくても良いからさ、ハト出してみたいよね」
それには同意である。
先輩は続ける。
「こう、帽子とか袖とか……胸の谷間とか」
先輩がチラリと僕を見たのに気付いたが、僕は知らん顔で本を読む。
「胸の谷間とか」
「なんで二回言ったんですか」
「何か反応ないかなー、と」
いちいち反応していたらキリが無い。
「別に何も思いませんよ。だいたい先輩は胸の谷間なんて無いじゃないですか」
失礼な、と先輩。
「谷間なんか無くてもハトは隠せるよ」
「でも先輩がやるとハトが出た瞬間に胸がペッタンコになるマジックですよね。それはそれでビックリしますけど」
「それ以上言うと口にハト詰めるよ?」
それは嫌なので僕は口を閉じた。
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