コイン

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コイン

 放課後。夕日に赤く染められた部室に僕と先輩。  今日は珍しく先輩がゴソゴソと机の下で手品の練習しているので、僕もコインを使った手品の練習をしていた。  手のひらに乗せたコインを、親指の付け根を使って飛ばす練習だ。  マッスルパスというらしいが、プロのマジシャンはこれでコインを瞬間移動させたように見せているのだ。何だかカッコいいので僕も挑戦する事にした。  これがなかなか難しい。何度やってもコインは飛ぶどころか、手のひらの上でパタンと倒れるだけなのだ。最初の300回くらいはこんなもんだと本に書いてあるので、僕はあと200回以上はこんな調子らしい。 「……」  手が疲れたので休憩。  ところで先輩は机の下で何をやっているのだろうか。  と思っていると、先輩が何か口ずさみ始めた。 「テレレ…」  ゴン、と鈍い音。どうやら机に頭をぶつけたらしい。 「……」  しばし沈黙。 「テレレレレレ~~ン♪」  仕切り直し。ちなみに口ずさんでいるのは手品でよく使われる音楽だ。
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