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「"体"には問題はないんですね?」
「本調子とは行きませんが。」
「__では王の名の元に命じます。今、北の方で暴動が起きようとしています。制圧してください。」
「__全ては仰せのままに。」
くるりと踵を返し、戦闘準備のために隊舎へと向かう。
「たぁ~いちょっ!」
隊舎に戻ったとたんに、誰かが僕に抱きついてきた。
まぁ、相手は誰か見当はついているが。
「__いい加減、やめませんか?」
「だって私にとっちゃ、お兄に等しいんだもの。ねぇ、クノウちゃんは居ないの?」
「お留守番させています。」
「ぶぅ~、つまんなーいの~」
やっと僕から離れてくれた彼女はスクナ。
メイド長と云うこともあって、何かと仕事が一緒になり、しかも何故かクノウを溺愛している。
(彼女曰く、クノウは「ルックス・性格ともに、どストライクな理想の妹」らしい)
人にあまり積極的に関わらないクノウに親しく話してくれる彼女に、僕は少しばかり感謝している。
___この過度なスキンシップさえなければ。
「今日はどこ行くんスか?」
彼はオルフ。この宮殿のコックだ。なかなか人懐っこい性格で、皆の弟的存在だ。
「北の"暴動"の鎮圧だそうです。」
「~了解。」
「鎮圧なら、私の出番ね!ふふふ、久しぶりに思いっきりできるわ」
「そう致しましょう。僕とオルフはスクナの支援です。」
「鎮圧ッスからね~了解。でも兄貴は大丈夫なんすか?"眼"。」
「まぁ、本調子とはいきませんが、大丈夫です。」
「まぁ、兄貴の腕なら心配もいらねっスけどね~」
パンっと手を叩く。自分に気合を、二人に注意を与える為に。
「では、参りましょうか。」
「「了解。」」
隊舎から出た際にふっと空を見上げるのが、もはや習慣となってしまった。
その空には満月が僕を嘲笑うかのごとく見下ろしていた。
~つづく~
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