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《「嘘だろ……。嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
ヒロトは呪文のように同じ言葉をつぶやき始める。
誰もが呆然とそれを見つめることしかできない。
そこには綺麗な赤色をした革靴を履いたエイジの足。
いつからか、膝から上は無くなっていた。
血を吹き出しながらもそこに立っていた。
綺麗な靴も徐々に黒く変色し、鉄臭い、血液の独特の臭いが辺りに満ちていく……。
「いやぁぁぁ!! いやぁぁ……っ」
再度叫び声を上げるミエも、最後は弱々しく擦り切れそうな声で口を閉ざした。
1人だけ、放心したかのようにナツコが体を震わしている。
「エイジ……」
誰が言ったのかはわからない。
だが、その声を最後に映像から音が消えた。
沈黙の映像。ヒロトの持つカメラは、静かに揺れていた。
ビチャッ
静かなトンネルに嫌な足音が響いた。》
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