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【それからはあまり覚えていない。
覚えているのは、血の海に佇むエイジの足が一歩前へ踏み出したこと。
刹那、全員が走り出した。
ただ恐怖から逃げ出す(滲んでいる)。
その時はまだ(滲んでいる)なかった。
足音が、足音が(滲んでいる)。】
《走っても、走っても。どんなに走っても。
足音が減ることはなかった。
三人は恐怖よりも疲労が勝ったのか、突然立ち止まる。
いつからか、トンネルの中は大量の足音に埋め尽くされていた。
小さな子供のような足音から、ゆっくりとした老人のような足音。
それは様々だった。
ミエがぶつぶつとぼやきだす。
「やだよ……。帰りたいよ。やだよ。やだよ。」
「静かにしてよ!!!」
突然のらしくないナツコの大声に、ミエはビクリと体を震わせた。
そして、その場に崩れるかのように膝を付き、静かに泣き始めた。
その泣き声も、大量の足音の中では聞き取ることはできなかった。》
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