31人が本棚に入れています
本棚に追加
《カツーンッ
たくさんの足音が響き続けるトンネルの中で、一つだけクリアに足音が聞こえ始めた。
それは、聞き慣れた。
トンネルに入る前から聞いていた足音。
カツーンッ
次第に、足音の感覚が狭まり、近づいてくる。
「嘘」
顔を上げたミエの表情からは血の気が失せていた。
暗いせいでそう見えるのか。
カツーンッ
はたまた、泣き疲れてそう見えるのか。
理由なんていくらでも考えられるが……。
恐らくは、この足音のせいだ。
カツーンッ
「なんで、どうして」
ただただ、ミエは呆然と呟く。
カツーンッ
カツーンッ
聞き慣れた、踵部が通常のヒールより固く加工され、音が強調されていることから、ミエのヒールの足音と同じだとわかる。》
最初のコメントを投稿しよう!