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入社から半年後。
母ちゃんは、死んだ。
やせ細って、落ちくぼんだ目。
それでも、幸せだと言った。
幸せだと言って、死んだ。笑いながら、死んだ。
俺は何も出来なかった。
親孝行なんて、何もしてない。
迷惑ばっか掛けて。最低の息子だ。
もし俺じゃなかったら。
俺じゃない、もっと優秀なやつが母ちゃんの息子だったら。
きっと母ちゃんは今も笑ってた。
きっと、幸せに生きてた。
バイトと勉強を両立出来る頭があれば。
授業料免除してもらえるような、頭があれば。
母ちゃんはとっくに病院行って、治療出来てた。
俺のせいだ。
俺なんかが母ちゃんの息子で生まれて来ちまったから。だから、
「ふっ。……意味ねぇよ。こんなもん。……意味ねぇんだよ……」
今更、何の意味もない。
俺は、握りしめた拳を振り下ろす先が無いことに気付き、ふっと力を抜いた。
「…………」
もう気力が無かった。
七年前、治療費を払えずみすみす母ちゃんを死なせた俺が、今や大金持ち。
何の冗談だよ。
笑えねぇんだよ。
ふざけんな。
なぁ、流れ星。俺はな、ただの金が欲しかった訳じゃねぇんだ。
俺はな、俺は、母ちゃんを救う金が、欲しかったんだ。
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