流れ星

6/6
前へ
/12ページ
次へ
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ あの時願いを叶えてやろうと思ったのは、ほんの気まぐれだった。 普段は無視するのだが、あまりに切実な声に、少し心が揺れたのだ。 それにしても、可笑しな奴だった。 「かねかねかねッ!!」 だなんて、笑ってしまう。 人間というやつは、本当に分からん。 こんな紙ぺらになりたいなんて。 あの日の青年は、八十二年の生涯を終え、その名は歴史に深く刻まれた。 二年後、彼を紙幣にしようと声が上がった。 今や、癌で命を落とす者は二割を切った。それも、世界を通して、だ。 反対する者など、無かった。 『望みは叶えてやったぞ』 母の死に涙した青年は今、一万円札の中で、静かに微笑んでいる。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加