第6話

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『養子』だという事実を知って以来 俺は少しずつ物に当たり、暴言を吐く様になった 多忙な父さんはほとんど家に居なくて 無関心な母さんは俺がどうなろうが構いもしなかった 幼い頃は寂しかった 父さんともっと遊びたかった 母さんにもっと構って欲しかった 姉貴ばかり狡い、羨ましい、妬ましい…… 昔は姉貴のことが大嫌いだった でも…… 「未来は私の大切な弟よ 次、手を出したら容赦しないからね!!」 どれだけ俺が嫌っても、お前はいつも俺を守ってくれたんだ 弱虫で泣き虫で頼りなかった俺を……お前はずっと弟として愛してくれた だからさ、次は俺がお前を守りたいんだ 守りたい……はずなのに 俺はお前を傷つけそうで怖いんだ 中学一年生の俺と高校一年生の姉貴 「ねぇ、未来……どうしてそんなことするの? 一体何があったの?」 「姉貴なんかに分かるわけねぇだろ……」 ――お前には一生分からないさ 物に当たって、暴言を吐いて、不良グループに入って…… お前に触れたい衝動をどう発散したらいいのか分からないから 姉貴の代わりに自分を壊して傷つけた 「分からないよ、ちゃんと話してくれないと…… 未来のことを分かりたくても分かれない……」 話す?ふざけるな 俺は『養子』だって言うのか? 俺はお前を『愛してる』って言うのか? ――出来るわけないだろ お前を傷つけたくない お前を泣かせたくない お前を苦しませたくない 代わりに…… 俺が傷つけばいい 俺が心で泣けばいい 俺が苦しめばいい 「俺に関わんな、姉貴なんて大嫌いだ」 ――愛してる
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