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家に帰ると、アパートの入り口に猫がおった。
小さい猫やった。
猫は痩せていて、眼やにのついた大きな目から涙を流して、いかにも病気って感じやった。
僕はコンビニで買ったさもしい夕飯を抱えたまんま、しゃがんで猫を撫でさする。
構われた猫は、構われるのが嬉しいのンか、弁当のシャケのにおいに反応してんのンか、背中を地面にこすりつけてくにゃくにゃする。
「はは。かわいなぁ。弁当、わけてあげたいけど…、これ、お前には塩辛すぎるやろ?あかんやんな?」
手を止めると、まだ撫でてもらえると思っていた猫は、僕が突然立ち上がったことに驚いて呆然と固まっている。
撫でてもらえないのは、自分の甘え方が足りなかったかもしれへんと思ったんか、またぞろくにゃくにゃする。
「またなぁ」
本気で付き合うつもりもないくせに、気まぐれに可愛がって飽きたら完全に忘れてる。人間はエゴの塊です。
あなたもそうですか?
構ってほしくてくにゃくにゃしてた僕を、撫でさすってくれはったんですか?
それとも、あの猫があなたですか?
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