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ボケても、ツッコんでくれる人もおらん部屋にひとり帰宅。
最近、ちょけて渋谷にアパートを借りた。直感でこの部屋やったらええことがありそうやなって思て。
ただ、まだそのええことの兆しもなければ、カーテンすらない状態。
「はあ~っ、疲れたぁ~」
冷めた弁当を電子レンジに入れてタイマーセットしてから、荷物を投げ出して冷たい床に寝ころんだ。
芋虫みたいに這っていって物入れを開けて、ドアの裏に張り付いとった手紙を開く。
どうも、前に住んではった人の置き手紙らしいんやけど。
この辺どこの店が便利とか、ここの定食うまいでとかいう内容で。
はじめはちょっと気持ち悪いと思ってんけど、最近は独り身の寂しさに、顔もわからん先住者の優しさにすら涙が出そうな始末。
「チーン」
電子レンジが僕の夕餉の完成を知らせる。
いくら旨い定食屋教えてもらっても、定時に帰れるような仕事やないし、結局コンビニの世話になっている。
まずくはないし、文句を言うつもりはさらさらないけど、やっぱり独りで食うんは、空しい。
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