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ほんのちょっと世話してもろて、一回だけまぐわっただけなのに、なんでこんな気持ちになるのんかわからんかった。
俺はまるのことを何も知らないのに。
何か勘違いしてるんじゃないのか何度も自分に問いかけてみても、俺は気がつくとまるのふにゃふにゃした顔を思い浮かべていた。
俺はまるのことが好きやった。
たぶん、初めて会ったときから好きやった。
そうはっきり言葉にしてまうと、座ってることすらできんくらい苦しくなって、枕に顔を押し付けて胸の中の息を全部吐き出した。
「まるが好き」
ちっさい声で言ってみた。
かすれて頼りない声は、白い枕にすぐ吸い込まれていく。
「俺は、まるが好き」
顔をあげて仰向けになってもう一度言ってみた。
耳がじんじん脈打って、数本の管の先端が刺さった皮膚がジリジリ痛んだ。
俺は、今、言葉にした気持ちをまるに知ってほしいんやろうか。
知ってほしいのに、言えないから、会えへんから、こんなに苦しいんやろうか。
もし、好きやって言ったとして、俺はそれからどうすればええ?
その先にいったい何があるん?
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