あの日、シバレタ

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* なんや知らんけど、点滴受けたらええ気持ちになってきよった。 「散歩してくるわ」 俺はナースに言い放って点滴がらがらいわせて死んだ目しとる病人の間をくいくい進む。 みんなこの世の終わりみたいな顔してけつかる。 『俺はまだ、マシなほうなんか』 そんな風に考えてしまう自分が一番卑しいんやと思う理性だけは、かろうじて残っているらしいわ。 病院内を点滴片手にちょらちょら歩き回ってたら、ひときわにぎわっているリハビリ室に、笑顔のまるがいた。 年寄りに囲まれて、愛想振りまいとる。 なんやねん。 お前、俺ンとこ来やんのに、そんなとこで笑ってんのか。 『まる』 頭の中で声にして呼んでみると、喉が痛くなった。胸がギューッと締め付けられて、足が止まった。 一度呼んでしまうとあとは止まらんかった。 まる、まる、まる、と脳内で繰り返す。 すると、まるは呼ばれたことに気がついたように、俺のほうを向いた。 俺を見つけたまるはぎょっとした。 ぎょっとしたまるを見て、俺がぎょっとした。 なんでなんで?なんでそんな顔するん?なんでそんな顔で俺見るん? まるはめっちゃ悲しそうな目ぇして俺ンとこに来る。 来んな、来んな。 これ以上近づいたら、しまいに殴るぞ。 俺の前に突っ立ったまるは、泣きそうな顔で俺の頭のてっぺんに手のひらを置いて優しく撫でさすった。 「なんで、泣いてはるんですか?」
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