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「あ」
「どしたん」
「ネクタイ忘れた」
「俺のン使こて」
「…すまん」
「ええよ」
俺がベッドに腰掛けてYシャツのボタン留めとると、ヒナは半裸のまんま自分のネクタイ取ってきて、俺の前で膝立ちする。
節くれだった長い指が首もとに伸びてきて、ガサツに俺の襟をたてる。
手際良く布を首回りにシュッと通す。
柄は、ちょっと趣味の悪い紫。
俺がネクタイ結ぶん苦手なん知っとるこいつは、何も言わんと黙ってやってくれんねん。
一連の動作になんの迷いがないんも、お互いどうかと思うけども。
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