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「すばるぅ」
天才の俺様は、早めに仕事を切り上げて、同期を見舞いにやってきた。
パーディションをくぐって中をのぞくと、居心地悪そうに横たわるすばるは、前よりちっさくなった気がした。
「ちょっと痩せたんちゃう?」
「ヨコは幸せ太りか?」
「誰がゴマだれ野郎やねん!」
「なんも言うてへんわ(笑)」
いつも通りキレのある皮肉は言うてるけど、なんでか寂しそうなすばる。
寂しがりやで人見知りのコイツに入院なんて酷やろうな。
しかも最近大部屋に入ったらしいし。
もうちょっと早めに来てやれば良かったわ。
なんて自戒しとると、すばるはニヤリと笑って首もとを指差すジェスチャーをする。
「ええのん、巻いとるやん」
あ、バレた。
「ヒナんち泊まったんか?」
「おん」
「ほーん」
「なんやねん!言いたいことあんなら言えや!」
「珍しく趣味の悪いネクタイしとるな思たからさ」
「ヒナのやってようわかったな」
すばるは一呼吸置いてから、俺をまっすぐ見た。
「…俺は、ヒナが好きやから」
お前の気持ちはわかってんねん。
痛いくらい、わかんねん。
そうじゃなきゃ、俺、ヒナのこと、好きになったりせぇへんもん。
「___わかってるで」
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