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「すばる君なにしてんねやろ…」
なかなか現れへんすばる君をエントランスで待ちぼうけてたら、数ヶ月前に退院しはったおばあちゃんがなぜか来ていて、なぜか大根をくれはった。
花束に大根て。
せっかくちょっとええ服着て、かっこええ感じ出そと思てたんに。計画がグズグズやぁ~。
「まる?」
「はっ!すばる君!」
僕が大根をどうしようか迷っていたら、小さな顔をマスクで半分以上隠したすばる君が不思議そうに立っていた。
「お前なんでスーツやねん?」
「色々ありまして…マスク、似合いますね」
「初めて言われたわ」
「いや…あのぅ、退院おめでとうございます!」
って大根引っ込めて花束を渡した。
「…ありがとぉ。ははは。やること昭和やな。これでお前とも会われへんくなんねんな。…最後にお前のふざけた顔見れて良かったわ」
「僕は!最後にしたくないです!すばる君ともっと…」
「なんやねんな」
「――――むっちゃ好きです」
「――――おお。」
マスクで隠しきれない大きな目が、更に大きく開かれた。
「メッセージカードに僕の連絡先書いときましたから、良ければ連絡下さい!では、お大事に!」
「おいっ!ちょ、まるっ!」
僕が逃げるようにその場を立ち去ろうとした時、すばる君のよく通る声がエントランスに響いた。
「はい」
「腹減ったわ。なんか食わせろ」
僕は背を向けたまますばる君の声を聞いていたけど、その顔は多分笑てるってなんでかわかった。
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