112人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
書きいれ時をとうに過ぎた3時前、店内は僕らで貸し切り状態。
4人掛けのテーブル席にふたりで並んで座り、各々注文した食事に舌鼓を打つ。
「うわぁ、野菜がしゅんでるぅ!はい、すばる君、あーん」
僕がいつもの調子で口元におかずを運ぶと、すばる君は大きく口をあけて、一口で食べはった。
「うんまあ!」
美味しそうに咀嚼する姿を見て、僕は自分のことよりも嬉しくなってしまう。
「俺のも食うか?」
「はい!」
たどたどしく運ばれる箸先に、僕はフライング気味に食いついた。
「うまっ!」
「うまいか」って言うて、すばる君も嬉しそうに笑ってはる。
ああ、幸せやぁ~。
「僕の前に住んではった人に感謝ですわぁ~」
「なんで?」
「この店旨いって置手紙がありまして」
「____キモチ悪いな」
すばる君は眉間にしわを寄せて白米をかき込む。
「僕も最初はそうやったんですけど、でも、こうも一人やとそんな優しさすら身にしみてくるっちゅうか…」
「さびしいんか?」
「さびしいですよう!」
「…家どこなん?」
すばる君は箸を置いて僕のほうをまっすぐ見た。
「寄ってきますか?」
て言うと、すばる君は黙って頷いて、僕の腕に細い腕を絡ませた。
最初のコメントを投稿しよう!