グッバイ・トゥーナイ

5/9

112人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
書きいれ時をとうに過ぎた3時前、店内は僕らで貸し切り状態。 4人掛けのテーブル席にふたりで並んで座り、各々注文した食事に舌鼓を打つ。 「うわぁ、野菜がしゅんでるぅ!はい、すばる君、あーん」 僕がいつもの調子で口元におかずを運ぶと、すばる君は大きく口をあけて、一口で食べはった。 「うんまあ!」 美味しそうに咀嚼する姿を見て、僕は自分のことよりも嬉しくなってしまう。 「俺のも食うか?」 「はい!」 たどたどしく運ばれる箸先に、僕はフライング気味に食いついた。 「うまっ!」 「うまいか」って言うて、すばる君も嬉しそうに笑ってはる。 ああ、幸せやぁ~。 「僕の前に住んではった人に感謝ですわぁ~」 「なんで?」 「この店旨いって置手紙がありまして」 「____キモチ悪いな」 すばる君は眉間にしわを寄せて白米をかき込む。 「僕も最初はそうやったんですけど、でも、こうも一人やとそんな優しさすら身にしみてくるっちゅうか…」 「さびしいんか?」 「さびしいですよう!」 「…家どこなん?」 すばる君は箸を置いて僕のほうをまっすぐ見た。 「寄ってきますか?」 て言うと、すばる君は黙って頷いて、僕の腕に細い腕を絡ませた。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加