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「おはようございます」
「おはよう」
「少しは慣れましたか?」
「んーなんとか、あ、部屋は片付いたかな」
「毎晩遅いのにもう片付いたんですか?」
「なんなら皆で飲みに来る?」
「いいですね! 是非お邪魔します」
「じゃあここが一段落したら皆で鍋でもしようか」
真新しい家具や事務用品。
ファイル一つ取っても全てが新品。
住み慣れた土地に別れを告げ、やって来たのはここ東京。
関西を中心に展開してきたうちの会社は、今回東京に支店を置く事になった。
そもそも関東にも顧客を構えていない訳ではなかったが、なかなか支店を置く事に踏み止まっていた。
何がきっかけでこうなったのかは分からないが、本社・支店から『選りすぐり』と呼ばれるメンバーが12人招集された。
そしてこの支店のチーフに選ばれたのが私だった。
悩む私に背中を押してくれたのは入社当時からずっと一緒に仕事をしてきた良きライバルであり、相棒と呼ぶべき相手だった。
長年ペアーを組んで仕事をしてた相棒との別れは、同時に恋人をも失う事へとつながった。
相棒と恋人を失ってまで手に入れた今のこの場所を私は数年後どう振り返るのか。
そこに後悔はないのか?
そんな事なんて分からない。
でも何もせずに後悔する位なら何かをしてから後悔したい。
オフィスの大きな窓の向こうは真っ青な空とは言い難い少し灰色の見慣れない空だった。
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