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第二艦隊参謀長である森下信衛少将が、厳しい顔付きで伊藤中将に耳打ちをする。
すると、伊藤中将はこの意見を受諾し、有賀大佐に総員退去を下命するように指示をした。
次いで、他の残存艦艇には生存者の救助を最優先し、救助を終えた後、速やかに帰投するように指示を与えた。
「総員上甲板!速やかに艦を退去せよ!!」
有賀大佐は、無念そうに総員退去の命令を下す。
生存してる乗組員達は、艦長の指示に従い皆、上甲板に上がって大和からの退去を開始する。
続いて有賀大佐は、大和艦長として最後の命令を下した。
「艦を北に向けよ…」
艦首を北に向ける。それは艦にとっての北枕を意味していた。
燃え盛り、黒煙を上げ、船体がギシギシと音を立てて傾きながらも、大和はその最後の力を振り絞りながら、艦首を北へ向けようとするが、既に操舵不能に陥り思うように転舵する事が出来ない。
「ふっ…よう頑張った…」
伝声管をさすりながら、ここまでの激戦を耐え抜いた大和へ労うように有賀大佐がつぶやく。
第一艦橋では、今まさに伊藤中将と艦隊幕僚達が最後の別れを交わしていた。
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