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「長谷川班長は、如何するのですか?」
心配そうに尋ね返す大石に、梅太郎は答える。
「勿論、ワシも退艦する!命を大切にしろ言うて来たワシが、命を粗末にする訳にはいかんじゃろ?それに負傷しとる、お前を放って置けんしの…」
言い終わると、梅太郎は大石の肩を抱え上げ、足下に注意を払いつつ脱出を試みた。
「しっかり掴まるんじゃぞ」
──と、梅太郎が口にした瞬間であった。
突如、敵のグラマン戦闘機が、大和から退艦する生存者達を狙って、容赦なく機銃斉射を行って来たのだ。
弾けるような甲高い金属音が、足早に周囲を駆け抜けて行く。
傾斜が進む中、足を滑らせ甲板を転がり落ちる乗組員達、梅太郎達もまた、大石が足を滑らせると引き摺られるように甲板を一気に滑り落ち、海へと乱暴に投げ出されてしまった。
あっと言う間の出来事である。海の中へと無造作に放り出された者達は、呼吸をする為、空気を求め、必死になって皆、海面から顔を出した。
瞬間、生存者達は呼吸の続く喜びとその安堵感を実感する。
大石も海上へ顔を出すと、空気を思いっきり吸い込み大きく一つ息を吐く。
「大石、無事じゃったか?」
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