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「班長!無事でありましたか」
梅太郎も、どうやら無事だったらしい。
海水に浸り、痛む傷口を堪えて大石は梅太郎の側へと懸命に泳いで近付く。
「班長、さぁ行きましょう」
「お前、傷口は大丈夫なんか?」
「大丈夫です!早く大和から離れないと沈没に巻き込まれます」
二人は、急いで大和から離れるべく泳ぎ始める。
ところが、それを遮るかのように再度、グラマン戦闘機が生存者達へ機銃斉射を仕掛けて来た。
無数の水しぶきが上がり、逃げる生存者達を激しく追い立てる。
その幾つかが、逃げ惑う者達を捉えた。
「ぐふっ!?」
不幸にも、弾丸の一発が梅太郎の背中の肉をえぐっていた。
「は、班長!!」
飛び散る血しぶきと肉片が、帰り血となって大石の顔を染め上げた。
梅太郎は、迫り来る機銃斉射から大石を庇う為、その身に弾丸を浴びてしまった。
「班長!班長、しっかりして下さい!!」
覇気のない顔付きの梅太郎を抱え、大石は叫び続ける。梅太郎の腕が力なく水面に揺れていた。もはや、自力で浮いている事すら出来ないようだ。
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